歯を抜いた日にインプラントを入れる? 〜抜歯即時埋入という選択肢とそのメリット〜
- 2026年10月26日
- インプラント
こんにちは。
竹村歯科本町医院です。
皆さんは、歯を抜いたその日にインプラントを入れることができるのをご存じでしょうか?
「歯を抜いたばかりなのに、もうインプラントを入れて大丈夫なの?」
「抜いたところが治ってから入れるものじゃないの?」
そう思われる方も多いと思います。
実際、インプラント治療というと、歯を抜いてから数ヶ月待ち、骨が治ってからインプラントを埋め込むというイメージが一般的かもしれません。
もちろん、その方法も現在広く行われている治療法です。
ただ、近年では歯を抜いたその日にインプラントを埋め込む「抜歯即時埋入(ばっしそくじまいにゅう)」という治療法も行われています。
この方法には、治療期間の短縮だけでなく、歯ぐきや骨の形を維持しやすくなる可能性があるなど、いくつかのメリットがあります。
今回は、この抜歯即時埋入について、従来の方法との違いやメリット、注意点などをお話ししたいと思います。
抜歯即時埋入とは?
抜歯即時埋入とは、その名前の通り、歯を抜いた直後にインプラントを埋め込む治療法です。
通常のインプラント治療では、抜歯した部分の骨や歯ぐきがある程度治癒するのを待ってから、インプラントを埋め込むことがあります。
この場合、抜歯からインプラントの埋入までに数ヶ月の待機期間が必要になります。
一方、抜歯即時埋入では、歯を抜いたその日にインプラントを埋め込むため、この待機期間を省略できる可能性があります。
ただし、ここで知っておいていただきたいことがあります。
「抜歯した日にインプラントを入れること」と「抜歯した日に歯が入ること」は別です。
インプラントを埋め込んだその日に仮歯を装着する方法もありますが、すべての患者様にできるわけではありません。
インプラントが骨にどの程度しっかり固定されているか、噛み合わせに問題がないかなどを確認し、慎重に判断する必要があります。
抜歯即時埋入のメリット① 治療期間を短縮できる
抜歯即時埋入の大きなメリットは、治療期間を短縮できる可能性があることです。
例えば、従来の方法では、
歯を抜く。
数ヶ月待つ。
インプラントを埋め込む。
さらに数ヶ月待つ。
最終的な被せ物を装着する。
という流れになることがあります。
もちろん、骨の状態や治療方法によって期間は異なりますが、抜歯から最終的な歯が入るまでに半年以上かかるケースも珍しくありません。
一方、抜歯即時埋入では、抜歯とインプラントの埋入を同時に行います。
そのため、抜歯後の治癒を待ってからインプラントを埋め込む期間を省略できます。
仕事が忙しく、何度も通院するのが難しい方にとっても、魅力的な選択肢だと思います。
ただし、抜歯即時埋入だからといって、インプラントと骨が結合するまでの時間が不要になるわけではありません。
インプラントが骨としっかり結合するまでには、一定の治癒期間が必要です。
治療期間が短くなることと、治癒を急がせることは違います。
ここは大切なポイントです。
抜歯即時埋入のメリット② 外科処置の回数を減らせる
患者様にとって、手術は決して気軽なものではありません。
痛みはどのくらいあるのか。
腫れるのではないか。
仕事に影響しないだろうか。
そういった不安を感じるのは当然だと思います。
通常、抜歯とインプラント埋入を別々に行う場合、それぞれのタイミングで外科処置が必要になります。
しかし、抜歯即時埋入では、この2つの処置を同日に行うことができます。
そのため、外科処置の機会を減らせる可能性があります。
手術後の注意事項や生活上の制限を伴う期間をまとめられることも、患者様にとってメリットになるでしょう。
ただし、1回の手術で行う処置が増えるため、必ずしも術後の痛みや腫れが少なくなるとは限りません。
大切なのは、単純に手術回数を減らすことではなく、安全に治療を進められるかどうかです。
抜歯即時埋入のメリット③ 歯ぐきや骨の形を維持しやすくなる可能性がある
私が抜歯即時埋入を考えるうえで、特に重要だと思っているのがこの部分です。
実は、歯を抜くと、その周囲の骨は少しずつ形を変えていきます。
歯を支えていた骨は、歯がなくなることで吸収され、特に頬側の骨が薄くなることがあります。
これは抜歯後に起こる自然な生体反応です。
骨が吸収されると、その上にある歯ぐきの形も変化します。
例えば、前歯を抜いた後に歯ぐきがへこんでしまうと、インプラントを入れたとしても、天然歯のような自然な見た目を再現することが難しくなる場合があります。
そこで、抜歯即時埋入という選択肢が出てきます。
抜歯直後の骨や歯ぐきの形を利用してインプラントを適切な位置に埋め込むことで、周囲組織の形態を維持しやすくなる可能性があります。
また、必要に応じて骨補填材を使用したり、歯ぐきの移植を併用したりすることもあります。
ただし、誤解していただきたくないのは、抜歯即時埋入をすれば骨が吸収されなくなるわけではないということです。
インプラントを入れても、抜歯後の骨の変化は起こります。
そのため、骨の厚みや歯ぐきの状態を正確に診断し、適切な位置にインプラントを埋め込むことが重要になります。
抜歯即時埋入は、骨の吸収を完全に防ぐ魔法のような治療ではありません。
あくまで、周囲組織の形態を考慮しながら治療を進めるための選択肢の一つです。
抜歯即時埋入のメリット④ 前歯の見た目を維持しやすい場合がある
前歯を失うことは、患者様にとって非常に大きな問題です。
食事だけでなく、会話や笑顔にも影響します。
特に、人前で話す機会が多い方にとって、前歯がない期間はできるだけ短くしたいものだと思います。
抜歯即時埋入では、条件が整えば、インプラントを埋め込んだその日に仮歯を装着できる場合があります。
これを「即時暫間補綴」などと呼びます。
仮歯を適切に使用することで、見た目を補うだけでなく、歯ぐきの形を整えるために役立つこともあります。
ただし、この仮歯は何でも噛める歯というわけではありません。
治癒期間中に強い力が加わらないよう、噛み合わせを調整する必要があります。
また、骨の状態やインプラントの固定が十分でなければ、当日に仮歯を装着しない判断も必要です。
私たち歯科医師が考えるべきなのは、単に早く歯を入れることではありません。
長期的に安定し、見た目も機能も満足できる状態を目指すこと。
そのために、即時に仮歯を入れるべきかどうかも慎重に判断しています。
抜歯即時埋入の成功率は?
ここまでメリットをお話ししてきましたが、気になるのは成功率ではないでしょうか。
「早く治療できても、長持ちしなければ意味がない」
その通りだと思います。
抜歯即時埋入については、これまで多くの臨床研究が行われています。
適切に症例を選択した場合、抜歯即時埋入でも高いインプラント生存率が報告されており、治癒後に埋入する方法と大きな差が認められない研究もあります。
一方で、抜歯即時埋入は、症例によって歯ぐきの退縮や審美的な問題などが生じる可能性もあります。
つまり、インプラントが骨に結合して残っていることと、歯ぐきの形や見た目まで含めて良好な結果が得られることは、必ずしも同じではありません。
特に前歯では、この違いが重要になります。
インプラントそのものが問題なくても、歯ぐきが下がってしまうと、見た目に影響することがあるからです。
そのため、成功率という数字だけで治療方法を判断するのではなく、骨や歯ぐきの状態、長期的な安定性まで考える必要があります。
すべての患者様に抜歯即時埋入ができるわけではありません
ここまで読むと、
「それなら、歯を抜くときは全部即時埋入にすればいいのでは?」
と思われるかもしれません。
しかし、実際はそう簡単ではありません。
抜歯即時埋入には、適切な条件があります。
例えば、次のような点を確認する必要があります。
- インプラントを固定できる十分な骨があるか
- 頬側の骨が大きく失われていないか
- 歯ぐきの厚みや形態に問題がないか
- 感染や炎症の状態はどうか
- インプラントを適切な位置に埋め込めるか
- 噛み合わせによって過度な力が加わらないか
特に重要なのが、インプラントを埋め込んだ直後の固定です。
これを「初期固定」と呼びます。
インプラントは、埋め込んだ瞬間から骨と結合しているわけではありません。
最初は周囲の骨によって機械的に固定され、その後、治癒とともに骨と結合していきます。
そのため、抜歯した穴の周囲に十分な骨がなく、適切な初期固定が得られない場合には、抜歯即時埋入を避けた方がよいこともあります。
また、感染があるからといって必ず抜歯即時埋入ができないわけではありませんが、感染組織の除去や骨の状態の評価が重要になります。
無理にその日にインプラントを入れることが、患者様にとって最善とは限らないのです。
CTによる事前診断が非常に重要です
抜歯即時埋入を安全に行うためには、事前の診査・診断が欠かせません。
特に重要なのが、歯科用CTによる三次元的な骨の評価です。
通常のレントゲン写真だけでは、骨の厚みや形態を十分に把握できない場合があります。
CTを撮影することで、頬側の骨の厚みや、インプラントを固定するために必要な骨の状態、周囲の重要な解剖学的構造などを確認できます。
また、インプラントをどの位置に、どの角度で埋め込むかという計画も重要です。
天然歯が生えていた位置に、そのままインプラントを入れればよいわけではありません。
将来的な被せ物の形や噛み合わせ、清掃のしやすさまで考えた位置に埋め込む必要があります。
私は、インプラント治療ではこの診断と治療計画が非常に大切だと考えています。
手術そのものの技術ももちろん重要です。
ただ、それ以前に、どのような治療方法を選択し、どこにインプラントを埋め込むのか。
ここを十分に検討することが、長期的な安定につながると考えています。
大切なのは「早く入れること」ではなく「長く使えること」
抜歯即時埋入は、非常に魅力的な治療方法です。
治療期間を短縮できる可能性があり、外科処置の回数を減らせることもあります。
また、適切な症例では、歯ぐきや骨の形を考慮しながら治療を進めることができます。
しかし、私たちが最も大切にしているのは、治療のスピードではありません。
10年、20年と長く使えるインプラントを目指すことです。
そのためには、あえて抜歯後に時間を置くこともあります。
必要であれば骨造成を行うこともあります。
抜歯即時埋入が適している患者様もいれば、従来の方法の方が適している患者様もいます。
どちらが優れているかを一律に決めることはできません。
重要なのは、患者様一人ひとりのお口の状態に合わせて、適切な治療方法を選択することです。
まとめ 〜インプラント治療にはさまざまな選択肢があります〜
今回は、抜歯したその日にインプラントを埋め込む「抜歯即時埋入」についてお話ししました。
以前は、歯を抜いた後に骨の治癒を待ってからインプラントを埋め込む方法が一般的でした。
現在では、診断技術や治療技術の進歩によって、抜歯即時埋入も重要な選択肢の一つになっています。
治療期間を短縮できること。
外科処置の機会を減らせること。
条件によっては、歯ぐきの形を維持しながら治療を進められること。
こうしたメリットは、患者様にとって大きな価値があると思います。
ただし、抜歯即時埋入が必ずしも最良の方法とは限りません。
歯を抜くことになった理由や、周囲の骨の状態、歯ぐきの厚み、噛み合わせなどによって適切な治療方法は異なります。
だからこそ、歯を抜く前の診断が非常に重要です。
一度抜いてしまった歯や、失われた骨を元の状態に戻すことは簡単ではありません。
抜歯が必要になった段階で、その後の治療まで考えておくことが大切だと思います。
竹村歯科本町医院では、CTなどを用いた精密な診査・診断を行い、患者様それぞれのお口の状態に合わせたインプラント治療をご提案しています。
「歯を抜かないといけないと言われた」
「抜歯と同時にインプラントを入れることはできる?」
「できるだけ治療期間を短くしたい」
そんなお悩みがある方は、ぜひ一度ご相談ください。
大切なのは、ただ歯を入れることではありません。
これから先も、しっかり噛めて、自然に笑えて、安心して生活できること。
そのための選択肢を、一緒に考えていければと思います。
院長経歴
【監修】 院長 元島慧
院長経歴
2012年 朝日大学歯学部卒業
2016年 大阪市内にて勤務
2020年 竹村歯科 本町医院院長就任
参加セミナー
2016年 大阪SJCDエンドコース (根管治療)修了
2017年 明海・朝日臨床審美コース (審美治療)修了
2017年 i6 Implant Education 第一期 (インプラント)修了
2017年 大阪SJCDベーシックコース (総合治療)修了
2017年 山田國晶先生エンドベーシックコース (根管治療)修了
2017年 山田國晶先生主催CERIclub(総合治療)参加
2018年 大阪SJCDマイクロエンドコース (根管治療)修了
2018年 牛窪先生Bio Raceを極める!ベーシックコース(根管治療)修了
2018年 ADPR定位置埋入コース (インプラント)修了
2018年 ストローマンベーシックインプラントロジー1Dayコース (インプラント)修了
2018年 第6期GPOレギュラーコース (矯正治療)修了
2018年 大森塾7期 (総合治療)修了
2019年 大阪SJCDレギュラーコース (総合治療)修了
2019年 山田國晶先生エンドレベルアップコース (根管治療)修了
2021年 CREDセミナー (保存治療)修了
2022年 臨床歯科麻酔管理指導医取得
2024年 General endo所属
2025年 FDP臨床研修会所属
2026年 小濵先生インプラントコース参加
所属学会
日本臨床歯科学会
日本顎咬合学会 認定医
日本顕微鏡歯科学会
臨床歯科麻酔管理指導医