歯髄温存療法とは?虫歯になっても神経を残す新しい選択肢
こんにちは!
本町医院 竹村歯科です。
少しづつ朝晩の気温が低くなり秋を感じるようになりましたね。
風邪など引かれぬようご自愛ください。
さて、皆さんは「虫歯が大きくなると神経を取らないといけない」
と聞いたことがあるかもしれません。
従来の歯科治療では、虫歯が歯の神経(歯髄)まで達してしまうと、
多くの場合「根管治療」といって神経をすべて取り除く方法が選ばれてきました。
しかし近年、歯科医療の進歩によって、
可能な限り神経を残す「歯髄温存療法(しずいおんぞんりょうほう)」
が注目されるようになっています。
この記事では、歯髄温存療法の基本的な考え方から種類、
メリット・デメリット、治療の流れや注意点まで、患者様に分かりやすく解説していきます。
神経(歯髄)はなぜ大切なのか?
歯の神経と聞くと「痛みの原因になるから取ってしまった方がいいのでは?」
と感じる方もいるかもしれません。
しかし実際には歯髄はとても大切な組織です。
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栄養と酸素を運ぶ:歯を生きた状態に保ち、しなやかさや強度を維持します。
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刺激を感じるセンサー:冷たいものや熱いものを感じ取り、歯を守る反応を起こします。
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防御反応をもつ:虫歯が近づくと新しい象牙質を作り出し、内部を守ろうとします。
もし神経を取ってしまうと、歯は“枯れ木”のような状態になり、水分を失ってもろくなりやすくなります。その結果、歯が割れてしまったり、長持ちしなくなるリスクが高まります。
歯髄温存療法とは?
歯髄温存療法とは、虫歯や外傷で神経の近くまでダメージが及んでいる場合でも、できるだけ神経を残して歯を長持ちさせる治療のことです。従来なら神経を取ってしまう場面でも、歯の状態を正しく診断し、特殊な薬剤や材料を使って神経を保護することで、歯を生きた状態で維持することを目指します。
歯髄温存療法の種類
歯髄温存療法にはいくつかの方法があり、歯の状態によって選択されます。
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間接覆髄(かんせつふくずい)
虫歯が神経のすぐ近くまで進んでいる場合に、完全には削り取らず、少し残した部分を特殊な薬剤で覆って保護する方法です。神経への刺激を和らげ、自然な治癒を促します。 -
直接覆髄(ちょくせつふくずい)
虫歯や外傷で神経がわずかに露出してしまったとき、その部分を薬剤で直接覆って保護する方法です。早期の処置であれば成功率が高くなります。 -
部分断髄(ぶぶんだんずい)
神経の一部に炎症がある場合、その部分だけを取り除き、残りの神経を保存する方法です。特に若い歯に有効です。 -
生活歯髄切断法(せいかつしずいせつだんほう)
神経の上部を切除し、根の中の神経を残す方法で、乳歯や若い永久歯で行われることが多いです。
使用される薬剤・材料
歯髄温存療法では、神経を守りながら細菌感染を防ぐために特殊な薬剤を使用します。代表的なのは
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MTAセメント:殺菌作用があり、固まると強固に密閉でき、神経の治癒を促す働きがあります。
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バイオセラミック系材料:生体親和性が高く、神経や歯質にやさしい素材です。
これらの材料によって、従来よりも成功率が高まり、実際の臨床現場でも広く使われています。
成功するための条件
歯髄温存療法はすべての歯で行えるわけではありません。成功のためには以下の条件が重要です。
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虫歯が神経の奥深くまで進んでいないこと
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激しいズキズキする痛みが出ていないこと
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歯の根の先に大きな炎症や膿がないこと
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治療後に細菌が入らないよう、しっかりした詰め物・被せ物ができること
歯科医師がレントゲンや症状を見ながら慎重に判断します。
メリットとデメリット
メリット
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神経を残せることで歯の寿命が延びる
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自然な噛み心地や感覚を保てる
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根管治療に比べて治療回数が少ないこともある
デメリット
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成功率は100%ではない(後から根管治療が必要になる場合もある)
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治療後も定期的なチェックが必要
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費用が高くなることもある
治療後の注意点
歯髄温存療法を行った歯は、今後も慎重に経過観察する必要があります。
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定期的な歯科検診でチェックする
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再び痛みや腫れが出た場合は早めに受診する
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日常の歯磨きや食生活に気を付けて虫歯を再発させない
まとめ
歯髄温存療法は、「できるだけ神経を残して歯を長持ちさせる」という現代的な考え方に基づいた治療法です。虫歯が深くても、必ずしも神経を取らなければならないわけではなく、歯科医師の診断と最新の材料によって神経を守れる可能性があります。
大切なのは、虫歯を早めに発見し、適切なタイミングで治療することです。もし「虫歯が深い」「神経を取るかもしれない」と言われても、歯髄温存療法の可能性についてぜひ歯科医師に相談してみてください。
歯を少しでも長く健康に保つために、早めの受診と定期的なメンテナンスを心がけましょう。
【監修】院長 元島慧
○院長経歴
2012年 朝日大学歯学部卒業
2016年 大阪市内にて勤務
2020年 本町医院 竹村歯科院長就任
○参加セミナー
2016年 大阪SJCDエンドコース (根管治療)修了
2017年 明海・朝日臨床審美コース (審美治療)修了
2017年 i6 Implant Education 第一期 (インプラント)修了
2017年 大阪SJCDベーシックコース (総合治療)修了
2017年 山田國晶先生エンドベーシックコース (根管治療)修了
2017年 山田國晶先生主催CERIclub(総合治療)参加
2018年 大阪SJCDマイクロエンドコース (根管治療)修了
2018年 牛窪先生Bio Raceを極める!ベーシックコース(根管治療)修了
2018年 ADPR定位置埋入コース (インプラント)修了
2018年 ストローマンベーシックインプラントロジー1Dayコース (インプラント)修了
2018年 第6期GPOレギュラーコース (矯正治療)修了
2018年 大森塾7期 (総合治療)修了
2019年 大阪SJCDレギュラーコース (総合治療)修了
2019年 山田國晶先生エンドレベルアップコース (根管治療)修了
2021年 CREDセミナー (保存治療)修了
2022年 臨床歯科麻酔管理指導医取得
2022年 日本顎咬合学会認定医取得
所属学会
日本臨床歯科学会
日本顎咬合学会 認定医
日本顕微鏡歯科学会
臨床歯科麻酔管理指導医