歯髄温存療法について
こんにちは♪
本町医院 竹村歯科です★
ムシ歯が大きくて神経を取らなくては
いけませんと言われた事はありませんか??
その神経必ずしも取らないといけないとは限りません!
もし、感染の度合いがひどく無い場合なら
歯髄温存療法の適応になる可能性があります。
歯髄温存療法とは、虫歯や外傷などで歯髄(歯の神経や血管が存在する部分)が損傷や感染を受けた際に、歯髄をできるだけ残すことを目的とした治療法です。従来の根管治療(歯髄をすべて除去して歯根内部を清掃・充填する治療)とは異なり、歯髄の生存を図り、歯本来の生理機能を維持することを目指します。
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歯髄温存療法の目的
歯髄は歯の健康維持において非常に重要な役割を果たしています。具体的には、以下の機能があります。
1. 感覚機能:冷温や圧力を感じ取り、異常を感知する。
2. 栄養供給:歯根膜や象牙質に栄養を供給し、健康を維持する。
3. 修復機能:軽度な損傷があっても修復象牙質を形成し、自らを修復する能力がある。
これらの機能を維持できる限り、歯髄を残すことが歯の長期保存に繋がります。そのため、歯髄温存療法は歯の寿命を延ばす上で非常に重要な治療法です。
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歯髄温存療法の適応症
歯髄温存療法が適応となるケースは以下の通りです。
1. 深い虫歯があるが、歯髄が壊死していない場合
2. 外傷により露髄しているが、歯髄が健全である場合
3. 歯髄炎が軽度であり、可逆性が見込まれる場合
一方で、歯髄が完全に壊死している場合や重度の感染が見られる場合には、根管治療が適応となるため、事前の診断が極めて重要です。
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歯髄温存療法の種類
歯髄温存療法にはいくつかの方法があります。代表的なものを以下に紹介します。
1. 覆髄法(ふくずいほう)
直接覆髄法(Direct Pulp Capping)
虫歯の治療中に歯髄が露出した場合に、その部分を水酸化カルシウム製剤やMTA(Mineral Trioxide Aggregate)で覆う方法です。歯髄を保護し、再生を促進します。
間接覆髄法(Indirect Pulp Capping)
深い虫歯で歯髄に近接しているが、直接露出していない場合に使用します。感染が懸念される象牙質を一部残し、その上に覆髄材を設置します。数ヶ月経過後に再評価を行い、必要に応じて再治療します。
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2. 部分断髄法(Partial Pulpotomy)
露髄した部分のみを切除し、健全な歯髄を残す方法です。主に外傷で露髄した若年者の前歯に適用されることが多く、MTAや水酸化カルシウム製剤で被覆します。歯髄全体を除去するよりも生活反応を維持できるため、長期的な予後が良好です。
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3. 全断髄法(Full Pulpotomy)
歯冠部の歯髄をすべて除去し、歯根部の歯髄を温存する方法です。特に若年者の永久歯で、根尖がまだ完成していない場合に行われます。根尖の発育を維持しつつ、感染リスクを最小限に抑えることが可能です。
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使用される材料
歯髄温存療法で使用される材料には以下のようなものがあります。
1. MTA(Mineral Trioxide Aggregate)
• 高い封鎖性と生体親和性を持ち、歯髄再生を促す。
2. 水酸化カルシウム製剤
• 抗菌作用と象牙質橋の形成促進作用がある。
3. バイオセラミック材料
• 生体適合性が高く、長期的な安定性が期待できる。
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歯髄温存療法のメリットとデメリット
メリット
• 歯髄機能を維持できるため、歯の生理機能を保てる。
• 根尖閉鎖が未完成の歯においても、成長を継続させられる。
• 歯の寿命を延ばすことで、将来的な抜歯リスクを減らせる。
デメリット
• 感染リスクが依然として存在するため、術後管理が重要。
• 治療成功率が症例により異なるため、事前診断が鍵となる。
• 患者様の協力が必要であり、術後の定期検診が欠かせない。
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治療後の管理と注意点
歯髄温存療法後は、以下の点に留意する必要があります。
1. 定期的なフォローアップ
治療後の経過観察が重要です。レントゲン撮影や臨床診査を通じて、歯髄の生存を確認します。
2. 症状が出た場合の迅速対応
冷温痛や自発痛が再発した場合は、早期に対応する必要があります。
3. 口腔衛生の徹底
再感染を防ぐため、ブラッシング指導やフッ素塗布を推奨します。
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成功率と予後
成功率は歯髄の健康状態や治療手技によって異なりますが、適切に管理された症例では高い成功率が報告されています。特にMTAやバイオセラミック材料を使用したケースでは、5年後でも90%以上の成功率が示されることが多いです。しかし、感染や破折が生じた場合には根管治療が必要となります。
まとめ
歯髄温存療法は、歯の寿命を延ばし、生理機能を維持するために非常に重要な治療法です。適切な診断と治療が行われれば、自然な歯を長期間にわたって維持することが可能です。ただし、成功の鍵は術後の管理と定期的なフォローアップにあり、患者様ご自身の協力も不可欠です。
不安や疑問がある場合は、ぜひご相談ください。歯を守るために最善の治療法を一緒に考えていきましょう。
【監修】院長 元島慧
○院長経歴
2012年 朝日大学歯学部卒業
2016年 大阪市内にて勤務
2020年 本町医院 竹村歯科院長就任
○参加セミナー
2016年 大阪SJCDエンドコース (根管治療)修了
2017年 明海・朝日臨床審美コース (審美治療)修了
2017年 i6 Implant Education 第一期 (インプラント)修了
2017年 大阪SJCDベーシックコース (総合治療)修了
2017年 山田國晶先生エンドベーシックコース (根管治療)修了
2017年 山田國晶先生主催CERIclub(総合治療)参加
2018年 大阪SJCDマイクロエンドコース (根管治療)修了
2018年 牛窪先生Bio Raceを極める!ベーシックコース(根管治療)修了
2018年 ADPR定位置埋入コース (インプラント)修了
2018年 ストローマンベーシックインプラントロジー1Dayコース (インプラント)修了
2018年 第6期GPOレギュラーコース (矯正治療)修了
2018年 大森塾7期 (総合治療)修了
2019年 大阪SJCDレギュラーコース (総合治療)修了
2019年 山田國晶先生エンドレベルアップコース (根管治療)修了
2021年 CREDセミナー (保存治療)修了
2022年 臨床歯科麻酔管理指導医取得
2022年 日本顎咬合学会認定医取得
所属学会
日本臨床歯科学会
日本顎咬合学会 認定医
日本顕微鏡歯科学会
臨床歯科麻酔管理指導医