根未完成歯について
こんにちは♪
本町医院 竹村歯科です。
今回は根未完成歯についてお話します。
私たちの歯は、
頭の部分である「歯冠(しかん)」が
先に完成します。
歯の根っこの部分である歯根は、
歯が生えた後も根っこの成長、
完成にはタイムラグがあります。
(多くは2~3年)
この期間の歯を根未完成歯と言います。
その間に虫歯にかかるといろいろトラブルが生じてしまうことがあります。
今回はそんな根っこが完成していない歯に対する治療についてわかりやすく解説します。
根未完成歯の特徴は以下の通りです。
・成長途中の永久歯(生え変わる大人の歯)
にみられるもので、
根っこの先はラッパ状に広がっている
・根っこの先の歯は非常に薄く脆い
・根っこの先には歯をつくる作用をもつ細胞が
たくさんある
根っこの部分がラッパ状に開いているため、
そのままでは正常な歯として一生涯使い続けることができないです。
そのため適切な発育を遂げる必要があります。
しかし、歯の根っこは、歯の神経が正常な状態でなければきちんと発育しません。
もし、生えたばかりの永久歯が虫歯になり、歯髄にまで虫歯菌が感染したとしましょう。そういったケースでは本来、歯の神経を全部抜いて根管内を無菌化しなければならないですが、根未完成歯にはそういった普通の治療が難しいです。
以下が根未完成歯に対して根っこの治療が難しい理由です。
1)神経が正常に反応するか(生きているか)診断するのが難しい
2)根っこの治療をする際に根っこの長さを測定するのが難しい
3)根っこの治療の際に、神経のお部屋の中をきれいに掃除をするのが難しい
4)根っこの治療でお薬を緊密に根っこの先に詰めるのが難しい(お薬が神経のお部屋から先に飛び出したり、短くなっったりしやすい)
5)根未完成歯に対して普通の根っこを行ってしまうと、根っこの発育が止まる。
そこで行われるのが、
アペキソゲネーシスやアペキシフィケーション、リバスクラリゼーションと呼ばれる特別な処置です。
①アペキソゲネーシス
アペキソゲネーシスは神経が生きている歯に対する治療になります。
根っこが完成していない歯で、神経の中のより根尖(根っこの先)に細菌の感染が起こっていない場合の処置で、神経の一部を取り除いて、その上に水酸化カルシウムまたはMTAというお薬を用いて封鎖を行い、根っこの成長を待つ方法です。
そうすることで、歯冠部の神経はなくなってしまいますが、歯根の部分の神経は残るので冷たさや温かさなどの感覚は残り、正常な歯と同様の反応を示します。そして処置を施したあとも歯の根っこの発育が進みます。
根っこの中に詰める水酸化カルシウムやMTAも大事ですが、根っこを封鎖するセメントやプラスチックの材料にも、後の歯の寿命に大きく関わると言われています。
②アペキシフィケーション
アペキシフィケーションは、神経が死んでしまった歯に対する治療になります。
すでに歯の神経が死んでいる失活歯が対象となるため、まず死んでしまった神経組織を全て取り除きます。
その後、神経が入っていた場所に歯科材料を詰めます。けれども、そのまま通常の材料で封鎖を行ってしまうと、根っこの発育も停止してしまうことから、水酸化カルシウムまたはMTAというお薬を詰めます。
すると、正常な発育とは少し異なりますが、
未完成だった根っこが閉鎖され、
根管充填できる状態となるのです。
アペキソゲネーシスとは違って、
根っこの先の内側の厚みは変わらず薄いままです。これは、根っこの先にある根っこを成長させる細胞が死んでしまっているので、
実は根っこが成長しているのではなく、
根っこの先に硬組織と呼ばれる硬い組織が添加されてあたかも根っこが成長しているかの様に見えるとされています。
したがって、根っこの先の歯の厚みは薄いので、後々歯が割れるリスクがあると言われています。この処置では、MTAを使用した方が水酸化カルシウムを使用した場合よりもより早く根っこの先が閉鎖するとの報告があります。
③リバスクラリゼーション
リバスクラリゼーションは、
②のアペキシフィケーションと同様、 神経が死んでしまった根未完成歯に対する治療法になります。
”アペキシフィケーション”と異なる点は、一度神経が死んでしまった根未完成歯において、血管再生が起こることによって血流が回復し、根っこの内側の厚みを増しながら根っこが成長することです。その後、治癒の状況によっては神経の反応が回復することもあります。
治療方法は、神経が入っていた場所をNaOClという薬液を用いてよく洗浄を行い、水酸化カルシウムまたは3mixというお薬を入れて1〜4週間程度様子をみます。ここで重要なことは、神経が入っていた場所を必要以上に触らないことです。特に根尖にはあまり触れないようにします。
その後、症状がなくなったらEDTAという溶液でよく洗浄し乾燥させた後に、ファイルまたは探針という尖った器具を根っこの尖端から2mmオーバーするまで挿入し、出血を促し根っこの場所に血液を満たします。ここで行った意図的に出血を促す操作は、AAE(American Association of Endodontists: 米国歯内療法学会)が提唱する方法で、出血を起こらせなくても根っこの先から神経と似た組織が自然に上がってきて治癒が起こるケースもあります。
その後、MTAというセメントを置き、
さらにグラスアイオノマーセメントやコンポジットレジン(CR)により蓋をします。
これで、治癒が良好であれば、
根っこの周りの骨が回復し、
根っこの内側の厚みを伴う根っこの成長が起こり、さらに治療前には反応がなかった神経の反応が回復します。”アペキシフィケーション”では、根っこの内側の厚みが生じないため、歯の破折リスクがありましたが、”リバスクラリゼーション”ではその点が改善されると考えられます。
以下はリバスクラリゼ-ション実施においてAAE(米国歯内療法学会)が推奨する事項です
1. 若い患者であること
2. 壊死歯髄であり、根未完成歯であること
3. 機械的拡大は行わない、もしくは行ったとしても必要最低限にとどめること
4. 血餅をつくること、あるいはたんぱくの足場になるようなものを根管内に入れること
5. 緻密な封鎖を得られるもので封鎖を行うこと
このように、根っこが完成していない歯に対しては、特別な処置が必要となります。
お子様などの歯でお困りの際は是非ご相談下さい♪
【監修】院長 元島慧
○院長経歴
2012年 朝日大学歯学部卒業
2016年 大阪市内にて勤務
2020年 本町医院 竹村歯科院長就任
○参加セミナー
2016年 大阪SJCDエンドコース (根管治療)修了
2017年 明海・朝日臨床審美コース (審美治療)修了
2017年 i6 Implant Education 第一期 (インプラント)修了
2017年 大阪SJCDベーシックコース (総合治療)修了
2017年 山田國晶先生エンドベーシックコース (根管治療)修了
2017年 山田國晶先生主催CERIclub(総合治療)参加
2018年 大阪SJCDマイクロエンドコース (根管治療)修了
2018年 牛窪先生Bio Raceを極める!ベーシックコース(根管治療)修了
2018年 ADPR定位置埋入コース (インプラント)修了
2018年 ストローマンベーシックインプラントロジー1Dayコース (インプラント)修了
2018年 第6期GPOレギュラーコース (矯正治療)修了
2018年 大森塾7期 (総合治療)修了
2019年 大阪SJCDレギュラーコース (総合治療)修了
2019年 山田國晶先生エンドレベルアップコース (根管治療)修了
2021年 CREDセミナー (保存治療)修了
2022年 臨床歯科麻酔管理指導医取得
2022年 日本顎咬合学会認定医取得
所属学会
日本臨床歯科学会
日本顎咬合学会 認定医
日本顕微鏡歯科学会
臨床歯科麻酔管理指導医